日本人が英語を話せない理由を女子大生が考えてみた

“Excuse me? Can I ask something?” “Where is Hakata station?” 街角でこんな風に話しかけられて “S…sorry” “えっ…?” というリアクションをした経験がある人、いきなり海外の人に英語で話しかけられて「どうしようどうしよう」とパニックを起こした経験がある人、多いのではないでしょうか。

日本人の7割が英語を話せない!?

数年前に行われた調査によると、日本ではおよそ70%の人が英語を話せない、もしくは単語を羅列する程度という結果(※1)が出ました。ここに私は疑問を抱きました。そもそも日本では、義務教育課程において、日常会話で必要とされるだろうレベルの文法や知識を誰もが学んでいます。また私の周囲にも、英語を読むことはできるし、英語話者が何を伝えたいのかの大体の意味を聞き取るもしくは推察することもできるという人は多くいます。しかしながらこのような調査結果が出るとは、一体全体どういうことなのでしょうか。
答えは至って単純で明快です。「英語の文法や聞き取りはしてきたけれど、話す練習はしてこなかった」これに限るのです。日本独特の風潮がこの悪い状況の追い風になっていることは否めませんが、この記事では根本的な原因である「英語を話す機会の少なさ」について言及していきます。

留学して気づいた、「話す」練習の大切さ

私は昨年一年間交換留学でベルギーへ行きました。ベルギーの公用語はオランダ語・フランス語・ドイツ語の三つで、私は大学で第二言語としてフランス語を専攻していたことと、ベルギーの大学と私の大学が交換留学の提携を結んでいたことがあり、ベルギーへの留学を決めました。とは言ったものの、ベルギーでは留学生用の寮に住んでおり、また居住区もオランダ語圏だったこともあり、会話は主に英語で行っていました。
もともと英語は少しなら話せるというレベルで渡航した私を待っていたのは、怒涛の英語漬けの日々でした。寮の同じユニットに住むユニットメンバーたちとの定期的な夕食会やミーティングは、当初は苦痛でしかありませんでした。というのも、彼らの英語を話すスピードは日本人同士が英会話教室などで行うそれのスピードとは比べるべくもなく段違いに速く、会話に入るどころか、聞き取るだけ、ついていくだけで精一杯だったからです。名指しで話を振られても “Yeah…I think so,” “yes,” “no,” “I don’t know” といった簡単な受け答えしかできない、せっかく海外の大学の講義を受けるという貴重な経験ができているのに英語がネックで授業についていけない、そんな自分に腹が立ったり悔しい思いをしたりするのは日常茶飯事でした。 そんな私を見かねた現地の友人が、私にこう声をかけてくれました。「日本からくる学生は、最初はあなたのようにうまく英語を話せない人が多い。でも、そのほとんどが間違えることを恐れて話さないだけ。間違えてもいいから、ゆっくりでもいいから、話そうとする姿勢を持つことが大事だよ。」と。それ以降、すぐに変われたかと言われれば人間そう簡単に変わることなどできるはずもなく、すぐにとは言わないけれど、少しずつ少しずつ意識して英語を話すように心がけました。

ベルギーに渡って半年が経った頃、あの友人から「本当に英語を話せるようになってきたね。留学当初と比べたら考えられないくらいだよ。」と言ってもらえた時は、とてもうれしく思いました。それと同時に、日本人が英語を話せないのは、その機会に恵まれていないからではないか、とも思いました。というのも、そのころの私が日常会話で使っていた文法は、中学生でも理解できるような簡単なものだったからです。つまり、中学生レベルの簡単な文法であっても、日常会話を成立させるには十分なのです。(大学の講義となると話は別ですが…。)このことから、日本人が英語を話せない大きな原因の一つとして、「話す練習」をしてこなかったことが挙げられます。

英語を話せるようになるには…?

それでは、どうしたら日本人は英語を話せるようになるのでしょうか。ここからはそれについて考えていきたいと思います。

「英語を話す機会の少なさ」。この課題の解決には、主に二つのアプローチが考えられます。

英語を学ぶ環境を見直そう

一つ目は、「抜本的な英語教育の見直し」です。これまでも述べてきたように、現在の日本の英語教育システムでは、英語を話す機会がほとんど設けられていないのが現状です。つまり、文部科学省が定める英語教育が学生に求める英語力と、世間や企業が求める英語力の間に大きな隔絶があるのです。今後、今まで以上に英語力が求められていくだろう現代社会に対応するためには、読み書きに重きを置く現在の教育内容から、実践的な英語(会話)にもう少しシフトした内容に変えていくことが必要不可欠だと思います。
ただし、ここで一つ問題が浮上します。それは、英語教師の質の低さです。海外への長期渡航経験のない人、海外の人と直に英語でコミュニケーションをとったことがない人に、英会話を教える能力が十分に備わっているかと聞かれれば、答えはNo.です。しかしながら、現在教壇に立ち、教鞭を執っている英語教師の中には、そのような経験がないという人もいます。私の通っていた中学校では、時々英語の授業にALTの先生がいらっしゃっていました。その授業中、当時私のクラスの英語を受け持っていた先生が、ALTの先生とうまくコミュニケーションを取れていないシーンが度々見受けられました。その様子を見て、私は「この先生に英語を教わっても自分は英語を話せるようにはならないだろうな。」と幼心に思ったことを今でも覚えています。加えて、文部科学省の調査(※2)によると、多くの企業で“英語ができる”目安とされるTOEIC730点以上(通常会話が完全に理解でき、応答も早いでレベル)の英語教師は中学で8.3%、高校で16.3%、そして英検準1級以上の英語教師も中学で10.1%、高校で19.6%だという結果が出ています。さらに、TOEICやTOEFL、英検の受験経験のある英語教師は、中学、高校とも半数にも満たなかったという結果も出ています。このような教師のもとで学ぶ学生が、彼ら以上のものなど得られるはずもありません。教育方針の改善云々よりも、まずは教師の質の向上、ここから始めなければならないのではないでしょうか。

積極的に外に出よう

二つ目は、「自分から国際交流の場に出ていく」ということです。現在様々な団体が国際交流を目的としてイベントを企画しているのを目にします。このような場に行くのは、大変勇気のいることですが、騙されたと思って一度行ってみてください。世界が変わります。日本に来る海外の人は、日本の文化や日本人に興味津々なので、おそらく質問攻めにあうことでしょう。そこで頑張ってコミュニケーションをとってみてください。今まで考えもしなかったようなことを気づかされたり、自分と異なる文化を持つ人と交流することで新たな世界が見えてきたりするはずです。そこで友達でも作れたなら御の字です。今後はイベントへ出ていかなくても、その友達と一緒にいるだけで、高いお金を払って海外へ行かなくても、英会話教室へ通わなくても、英語が練習できるだけでなく、異文化に触れることもできるのです。何をするときでも最初の一歩は総じて重たく労力のいるものですが、そこで頑張れるかどうかが人生の分岐点になると思います。しかしながら、最初の一歩を踏み出して、国際交流の場に出てみたは良いものの、海外の友達を作ってみたは良いものの、何を話したらいいか分からない、という人も多いのではないでしょうか。これは、海外で生活していく中で私がぶつかった壁の1つでもあります。ベルギーで生活していくうちに、友人ともそれなりに仲良くなり、お互いのことを粗方知ってしまった私は、彼らといる時に話すネタを見つけるのに大変苦労していました。そんな中、友人の一人が共通の友人にこう漏らしていたことが分かったのです。「あの子は私や私がしていることに関して何も聞いてこない。私に興味がないのかもしれない。悲しい。」と。これを知った私は、「しまった」と思うと同時に、文化の違いを身に染みて感じました。というのも、海外の人は皆、道ですれ違う一瞬でさえ「やあ、元気?」「元気だよ。そっちは?」「もちろん元気さ!」といった短いながらもコミュニケーションの場にしてしまうのです。これに対して、日本人は相手の体調や様子、相手が今日しようとしていることや昨日していたこと等に関して、いちいち聞いたりせず、相手の様子を見て察して自己完結する傾向にあります。この「察する」という行為、日本人は当たり前のようにする人も多いと思いますが、海外ではほとんど通用しないのです。現に、私はその友人の様子や行動、SNSの投稿などから、その友人がどこで何をしていたのか、今から何をしようとしているのか、元気か否かといったことを察して自己完結して、友人本人にその話題で話を振るという行為をほとんどとしていませんでした。そして、それが原因で、「私がその友人に対して興味がないのでは?」と言われてしまったのです。これは海外の友人を持たなければ気づけなかったことですが、文化が異なればコミュニケーションの方法も異なるのだということを実感した出来事でした。つまり、話を戻すと、話すことがないわけではないのです。1から10までを尋ねることは、日本人からすれば「少しは自分で考えるなり察するなりしようよ」と思われがちですが、海外の人に対してはむしろ必要なことなのです。少しでも気になったことや聞いてみたいことがあれば、遠慮なく聞きましょう。「今日の調子はどう?」「週末は何をしたの?」「今日は何をする予定?」などなど。そうすれば、相手はあなたが自分に対して興味を持っているのだと思い、よりコミュニケーションをとりたい、仲良くなりたいと思うことでしょう。

英語で世界を広げよう!

最後に、よく「自分は一生日本から出ないから英語なんかできなくても良い」という人を見受けます。確かに、英語という日本語とは全く言語体系の違う言語を習得するのはとても大変なことです。しかし、英語は世界第一共通言語です。英語が分かるだけで、世界はとても大きくなるのです。日本という小さな島国で満足してしまうのはもったいないし、世界を知ることで改めて日本の良さを感じることもできます。
これまで日本の英語教育システムや日本独自の習慣が抱える課題を列挙しましたが、「英語を話す」ということをそんなに固く考えないでほしいと思います。文法なんか気にしなくて良いんです。間違えても良いんです。だって授業じゃないんですから。もっとフランクに、ジェスチャー等を交えて伝えようとする姿勢を見せたならば、相手はきっと理解しようとしてくれるはずです。単語が分からなければ、スマートフォンを活用してその場で調べたり、写真を見せたり、翻訳機能を使ったり、何かしらのアクションを起こしましょう。「英会話」とは、私たちが日常的にしている会話を英語でしているだけのことで、何も難しいことはないのです。日本語で話していても「あれ何だったっけ?ちょっと調べるから待って!」というシーンもあるはずです。コミュニケーションは言葉のキャッチボールです。大事なのは、お互いがコミュニケーションを成立させようとする姿勢、話そう、伝えようとする姿勢、相手のことを理解しようとする姿勢だということを心に留めて、コミュニケーションを楽しみましょう!


(※1)北条かや,『日本人の72%が「英語は話せない」「単語を羅列させる程度」』,2013年12月23日,EconomicNews,(最終閲覧日:2017年9月22日)
http://economic.jp/?p=29982

(※2)文部科学省 平成28年度「英語教育実施状況調査」
http://www.mext.go.jp/component/a_menu/education/detail/__icsFiles/afieldfile/2017/04/07/1384236_01_1.pdf